電気主任技術者の外部選任とは、事業用電気工作物の自主点検を外部の業者や個人事業主に委託することです。事業用電気工作物は電気事業法で定期的な自主点検が定められています。基本的には設置してある設備の持ち主が電気主任技術者を雇用し、点検を行わなくてはなりません。しかし、さまざまな理由で直接雇用が難しいところもあるでしょう。そのため、事業用電気工作物のうち、限られたものの自主点検は、外部選任を行うことができます。
今回は、電気主任技術者の外部選任ができる要件などを解説しましょう。
- 電気主任技術者と事業用電気工作物の自主点検
- 電気主任技術者の外部選任とは?
- 電気主任技術者の資格を取得する方法
- 電気主任技術者の外部選任に対するよくある質問
この記事を読めば、電気主任技術者の仕事内容などもよく分かりますよ。電気主任技術者の資格取得を目指している方も、ぜひ読んでみてくださいね。
1.電気主任技術者と事業用電気工作物の自主点検
この項では、電気主任技術者の職務や、事業用電気工作物の自主点検について解説します。なぜ、自主点検が必要なのでしょうか?
1-1.事業用電気工作物とは?
事業用電気工作物とは、工場や発電所・変電所・不特定多数の人が使用する場所で使われる電気設備を指します。高電圧の受電設備などや配線などで、使用方法を間違えたりメンテナンスを怠ったりすると大きな事故を起こす可能性もあるでしょう。
なお、事業用工作物の中でも、
- 7000V以下で受電する需要設備
- 出力1000kW未満の発電所(原子力発電所を除く)
- 600V以下の配電線路を管理する事業場
以上の3つは自家用電気工作物と呼ばれています。
1-2.事業用電気工作物の自主点検とは?
事業用電気工作物は、電気事業法第42条に基づき自主的な定期点検が義務づけられています。定期点検には、日常・月次・年次のほか、緊急時の点検・工事中の点検などがあり、その頻度までは定められていません。電気事業法施行規則第50条に基づき、電気主任技術者が中心となって保安規定を作成し、それに沿って行うことになっています。
なお、作成した保安規定は、最寄りの産業保安監督部に届け出をしなければなりません。この際、点検の頻度だけでなく自主点検の中心となる、電気主任技術者の姓名や住所なども記載する必要があります。点検の頻度や電気主任技術者が交代した場合は、速やかに変更届けを出しましょう。
なお、保安規則とおりに点検を行わない場合は、電気事業法に基づいて罰金等の罰則が科せられるほか、事業用電気工作物の停止命令が下ることもあります。
1-3.電気主任技術者について
電気主任技術者は、今まで解説してきたとおり、事業用電気工作物の自主点検などの保安監督業務を行うことのできる国家資格です。第一種~第三種までの資格区分があり、
- 第一種:すべての事業用電気工作物
- 第二種:電圧が17万V未満の事業用電気工作物
- 第三種:電圧が5万V未満の事業用電気工作物(出力5千kW以上の発電所を除く)
以上のように、保安業務を行える電気工作物の違いがあります。事業用電気工作物の自主点検は、基本的に有資格者を直接雇用して行わなければなりません。
2.電気主任技術者の外部選任とは?
この項では、電気主任技術者を外部選任する要件などを解説します。どのような要件があるのでしょうか?
2-1.外部選任とは何か
前述のとおり、事業用電気工作物を設置してある施設は、基本的に電気主任技術者を直接雇用しなければなりません。しかし、さまざまな事情で、どうしても直接雇用ができないところもあります。この場合、前項でご紹介した自家用電気工作物を設置してある施設に限り、電気保安協会などの業者や電気管理技術者に点検を委託することができるのです。なお、自家用電気工作物以外の事業用電気工作物は外部選任が認められないので、注意しましょう。
2-2.外部選任を受けられる有資格者
自家用電気工作物は、電気主任技術者であればどの資格区分でも自主点検が行えます。ただし、外部選任は、電気保安協会などの電気保安法人に雇用されている電気主任技術者か、一定期間の実務経験を積んで独立した電気管理技術者に依頼してください。資格を持っているけれどまったく活用していない人や、すでに仕事を引退してしまった人を選任することはできません。また、名義貸しもダメです。さらに、外部選任を受けた場合、電気主任技術者は電気工作物に異常が起きたら、すぐに駆けつけなければなりません。ですから、あまり遠くに住んでいる人も選任を受けられないので注意しましょう。
2-3.外部選任の方法
外部選任をするには、事業用電気工作物を設置している場所の所有者が電気保安法人か、電気管理技術者と契約します。その後、保安規則を産業保安監督部に提出してください。問題がなければ、届け出が受理されます。
2-4.メリットとデメリット
外部選任を行えば、電気主任技術者を直接雇用しなくても、自家用電気工作物を設置できます。その一方で、契約を打ち切られてしまえば、新たな電気主任技術者を探さなければなりません。特に、電気管理技術者の場合は、70歳以上でも現役で働き続けられている人も珍しくない一方、突然引退してしまう人もいます。契約期間などはしっかり紙面に印刷して契約しましょう。
3.電気主任技術者の資格を取得する方法
電気主任技術者の資格を取得するには、電気技術者試験センターが主催する試験を受けて合格する必要はあります。受験資格は定められていませんが、第三種でも合格率が10%を切ることも珍しくない難関試験です。無資格未経験から受験する場合は、腰を据えて勉強しましょう。第二種・第一種からいきなり受験することも可能ですが、大学等で電気関係の学科を卒業していても、不合格になることが珍しくありません。まずは第三種から挑戦してみてください。
試験は、法規・理論・電気・機械の4科目の学科試験で、第三種はこれに合格すれば取得できます。第一種・第二種は学科試験に加えて「電力・管理」と「機械・制御」の2次試験がありますので、さらに難関です。
学科試験は科目合格が認められており、3年間で4科目を合格すれば総合合格となります。ですから、3年かけて資格を取得してもよいでしょう。
勉強法は独学と通信教材が中心ですが、無資格未経験の場合は通信教材の方が丁寧に作られているので、おすすめです。
特に、SATの教材はテキスト式の参考書のほか、専門の講師による授業を収録したDVDやeラーニングがついてきます。まるで予備校に通っているような感覚で勉強ができますし、分からないところがあればメールで質問も可能です。ぜひ、利用してみてください。
4.電気主任技術者の外部選任に対するよくある質問
Q.外部選任はいつ依頼しなければなりませんか?
A.自家用電気工作物を稼働させるときには、すでに選任をしている必要があります。
Q.外部選任を複数の電気主任技術者に行うことはできるでしょうか?
A.可能ですが、この場合は契約ごとにお金がかかるうえ、実際に点検を行っていた実績がないと罰則対象になります。
Q.電気保安法人もしくは、電気管理技術者のどちらかでないと選任できない電気工作物はあるでしょうか?
A.今のところありません。
Q.電気保安法人は、電気保安協会だけでしょうか?
A.いいえ。都市部では複数の電気保安法人があります。
Q.電気主任技術者を直接雇用する場合、未経験者でも問題ないでしょうか?
A.はい。直接雇用する場合は問題ありません。
5.おわりに
いかがでしたか? 今回は、電気主任技術者の外部選任に関する解説をしました。電気工作物の自主点検は、とても大切なものです。外部選任をした場合も、日常の点検は従業員が行いましょう。また、すぐに電気主任技術者に連絡を取れるような体制を作っておくことも大切です。